掛号<br>
                            ふなじ       ジエンハイ<br>
○民商は、外国に通商する時、海路なれば船牌を<br>
                        リンパイ（注一）<br>
その地の知県へねがい出で領牌す。その船牌都合<br>
          ウーエン（注二）            ブウチャウ        ブウ<br>
四枚あり。撫院より一枚、これを部照　という。布<br>
チンスウ（注三）            スウチャウ<br>
政司より一枚、これを司照　という。知県より一枚、<br>
      ヒエンチャウ（注四）    ハイバンテン（注五）            テン<br>
これを懸　照　という。海防庁より一枚、これを庁<br>
チャウ                     しんこう        ダンスイン照という。右四枚を持って津口〔港〕の塘�ｹ〔や<br>
                                      はい<br>
くしょ〕へ至り、荷物のあらためならびに牌のあ<br>
           う<br>
らためをも請くる。このとき塘�ｹよりその役所の<br>
                ヒエン         は印を押したる紙を県牌ばかりに粘りてわたす。こ<br>
    クワアアウ<br>
れを掛号という。<br>
注一、領牌は牌（証明書）をいただくこと。<br>
  二、撫院は巡撫の役所のこと。なお部照の部は       部院すなわち巡撫のこと。<br>
　三、総督・巡撫の下にあって省の財政、駅伝な       どの行政を統轄する地方官庁。正しくは承       宣布政使司といい、長官を布政使という。<br>
　四、あとには縣牌とあり、縣が正しい。なお、       ここで県にヒエンと仮名をふっているが、       巻五ではヱン。県の中国音に対する日本人       の音のとらえかた、あるいは表記のしかた       じたいにもいろいろと問題がありそうだ。<br>
　五、庁は県とは別に府に直属する地方官庁で、       分防同知がその長官。嘉興府の直轄する乍       浦庁は海防同知が長官であったから海防庁、      あるいは海防分府という。海防同知は府の       補佐官で、海岸を防禦し安寧を維持する任       を担当する。<br>
                （「清俗紀聞２」一四八〜一四九頁・『「東洋文庫・平凡社』）<br>