○開館貿易の始まり
○禮部より中山王世子尚貞あて、福州琉球館における貿易許可の件についての咨文
した
 禮部、會典に循がひ糸を買はんことを請ひたる
しさい お ゆる由、康熈七年の彼の處に在いて貿易するを聽せし
おもい こ 子細 説明して明きらかに
を體やられんことを乞ひたるの旨を剖明 して、
ねんごろ 禮部 命令 詳細に調査
懇 に□□し、該の部に勅して定例を詳察 せしめ
            かさ 命令 天子のいつくしみ
られたれば、申ねて督撫に諭して以って天仁
ひろ
を拡めしめたる事の爲にす。
禮 部 @
  禮科より抄出されたる該の本部の題覆によれば
以上
『琉球國中山王世子尚貞の奏の「前事[云云]との等
の趣
因について、康熈玖年拾月拾参日に奏したれば、
うけ玉
拾年捌月弐拾弐日に旨を奉 はるに「該部より議奏
むねにしたが
せしめよ、欽此」とありたること欽遵 ひて捌月
お 禮部
弐拾參日に於いて[禮科より抄出されて]部にいたりたり。
禮 部 A
[そこで]該の臣部が議し得たるに

琉球國中山王世子尚貞の疏に稱ふには
ひそか おも 辺鄙な土地
「切 に念ふに、臣が國は荒 僻にして、凡そ服飾
もと
の器用は多く天朝に仰むるなり。而して官伴・水
それぞれ しおから
稍は、各 土産を帶び、米麦・魚醤の如きの類を
特別
ば、綿布・磁器・雜物に兌換す。近ごろ朝廷の殊

の恩恵
恩 を蒙り、舊に照らして柔遠驛を起蓋し、彜衆を安挿せしめられ、一切の貿易は皆な驛中に在り。

例として憑るべきあり。案として考ふべきあり。
もと も
原より沿途の比には非ざるなり。今、若し悉く會

同館に運至して貿易せしむれば、夫れfより六千里にして京に至り又た京より六千里にしてfに返
そ はか
るなり。其の間の水陸の夫力の一金の物は、計る
ついえ いわん
に數金の費 あり。況 や、随帶せる土産は粗にして重き物に係れば、搬運の萬難なるをや。これ天
うれへるさま
朝の必ず憫念する所の者なり。今臣尚貞、煢煢
やまい あ なほ 先祖の事業を継承 すべ
として疚 に在り。尚未だ嗣服 せざれば、凡て事は一に國法に遵はんとするものなり。」との
以上の趣等語あり。
B査し得たるに[
禮 部 C
康熈三年四月内に[禮科より抄出されたる]臣部の題覆に
うやうや
《廣東巡撫の盧興粗の”恭 しく暹羅の進貢のこ
報告   い
とを報することの爲めにす”との一疏の内に開へ
ある
る「進貢に順帶する貨物は、或いは貢使をして自ら船夫を雇ひて載運せしめ、或いは驛遞・船夫を
以上の趣
して運送せしむべし」との等因について、具題し

受け玉
たれば、旨を奉 はるに「暹羅國の貢使の貨物は、もし彼が自ら夫力をだして京城に帶來して貿易せ
ねが  き ゆる
んことを願はば、來たらしめて貿易するを聽し、

もし彼の處に在いて貿易せんことを欲すらば、擾
申しつ
亂を致すなからしめ、 該の地方に着けて委員 物事を処理する才能がある
委として能幹 の官員を選び、貿易を監看せしめよ」とあり。
 C 旨にしたが
》とのことありて、欽遵 ひたること案に在り、
B
]と、あり。

今、琉球國中山王世子尚貞の奏に「請ふらくは、
たの
凡そ服食の器用は多く天朝に仰むものなれば、而
それぞれ
して官伴・水稍の各 帶せる土産にして米・麦・魚醤の如き類をば、綿布・雜物に兌換せられんこ
まかりこ まさ
とを」とありて、前來せり。應さに暹羅國の例に照らして、進貢に順帶せる貨物は、福建省の柔遠
ゆる
驛に在りて貿易するを准すべし。違禁の物を買は
のぞ ほか な
しめざる除くの外、仍ほ該の地方の督撫をして貿
自分
易を監看せしむれば可なり。臣等、未だ敢えて擅
勝手に処理 つつし便 せず。謹 みて題して旨を請ふものなり。
A
との[結論にいたれる]
以上の趣等因をば、康熈十年八月二十八日に題したれば、
受け玉
本月三十日に旨を奉 はりたるに「議に依れ、欽此」
むねにしたが
とあり。欽遵 ひて抄出す。
@
と、ありて部に到れり。

 其の琉球國の進貢に順帶せるの貨物は福建省の
お柔遠驛に在いて交易せしむるも、該の地方をして委員
委として能幹なる官員を選びて監看せしめ、違禁の史書・黒黄紫皀の大花・西番連の緞疋・焔硝・
のぞ ほか牛角・兵器等の項の物を買はしめざるを除くの外、
そ 申しつ
其の餘の糸絹・布疋・雜物は着 けて交易せしめて
あ まさ なら
帶去せしむべし。相い應に福建督撫并びに琉球國
あ まさ
世子へ移咨すること可なるべければ、相い應さに
よろ すすめゆ移咨すべし。此が爲めに、合ろしく咨して前去か
ねがは 承 知 とりはから すべ
しむれば、煩爲くは査照して施行 はれたし。須からく咨する者に至るべし。
  右は琉球國中山王世子に咨す。
康熈十年九月十日
○右の咨文によって、清代における福州琉球館における開館貿易の開始は康熈十年以降のことであることが知れる。