會同四譯館
○稽察大臣は満州二人なり。提督會同四譯館兼鴻臚寺少卿一人。賓館の事、其の譯語のことを掌る。
○凡そ貢使が京師に來たれば、皆な之に館舎を授け、給するに器用・廩・芻秣を以ってす。事を
おわ しら
竣らば則ち其の人數を覈べて而して冊報す。
案内してみちびく
○凡そ貢使の行禮には皆なこれを引 す。
それぞれ
○凡そ譯書は各 其の體を辧じて而して其の意義を考ふ。其の屬を率いて以って肄習す。
 ・大使(序班内より升用す)
・序班は漢人二人(譯字生より考充す)
・掌教譯字生(譯字生は八人なり。順天府に行 文して童生内より文義の通順、字畫の端緒 なる者を以って部に送り考取す。即ち序班 を以って教習と爲し各國の文字を分習する なり)
 ・朝鮮通事は八人(通事の内、六品一人、七品 一人、八品二人は内務府の佐領下より朝鮮 語を習ふ者を選びて充補す。又た、六品一 人、七品一人、八品二人には鳳凰城の品級 なき通事の内より、部より調取して引見し て補用するなり。)朝鮮語を譯することを 掌るなり。(「欽定大清會典・巻き三十九」〇四一三〜〇四一四)
○乃ち其の表奏を進む。(貢使が京に至らば、先
およ それぞれ
に禮部に於いて表を進む。貢使曁び從官は各 本
四譯館 禮部
國の朝服を服し、館より部に赴き、階を升り皆な
ひざまず
跪 けり。正使は表を奉じて會同四譯館卿に授け、
取りつ
[會同四譯館卿が]轉 ひで禮部堂官に授く。正使以下、三跪九叩頭の禮を行なひ、儀制司官が表を奉じて退
提出 おくりわた
く。次の日に奏を具 して内閣に送交 す。如し、金葉表に係らば、内閣によりて収受して後、即ち
も 禮部 よ
に上届の進む所の者を將って交出し、部に由り内
おくりわた も
務府に送交 す。如し貢使の呈明して、國王の命を

奉けて表文・方物をばそれ親しく獻ぜんことを願
ふ者あらば、旨を得て、其の親しく獻ずることを
ゆる とりつ とも准さるれば、[禮部は]轉 ひで貢使に知らすと並に該の國王に知照するなり。(「欽定大清會典」巻三十九・主客清吏司〇四〇八)
○貢物が京に至らば、會同四譯館卿によりて査驗し、常貢及び慶賀の貢物をば題請して収受するを
ほか除くの外、其の謝恩及び陳奏して進む所の方物は、禮部部に由りて、應さに収受し、或は留めて下次の正
あ も
貢に抵てるべきや否やを將って具題して旨を請ひ、
受け玉 あ
如し旨を奉 はりて留めて下次の正貢に抵てるべし
もっ  わた 保 管
とあらば、則ち貢物を以て内務府に交して存儲せし
ま あ 題本  お
め、應さに貢すべきに届たるの時、本内に於いて聲明して、[前回内務府に存儲して留めて下次の正貢に抵てることになっている貢物を
あ ゆる應貢の時の正貢に]抵てることを准さるれば、[留めて下次正貢に抵て
不   足   分 あて み
られた貢物をもって應貢の時の貢物の]盡さざる者を抵充たし、[その餘
な か 申し送りて 知
は]再び下次に移入す。仍ほ該の國王に行 知らすべし。・・・下略・・・・・・
(「欽定大清會典・巻三十九、主客清吏司」〇四〇八)
●「呈稟文集」第十四号文書
 具呈す。琉球國耳目官毛天相・正議大夫鄭弘良
ごろつき やぶ も
等、土棍が騒擾するあれば、害を劈り以って國典
あき も いつ
を彰らかにし以って遠人を柔くしまれんことを天
うっ
にケたへることの爲にす。
せつに思う よしみを通ずる  くだん
  切 に、相等は天朝に納款 して、所有の官
これまでの例
伴水稍が随帶の銀兩をば、歴例 にては、絲布・
さ 事柄
雜物に兌換す。向きの縁故は明の末年のことなり
ごろつき むさぼ 手ずる・術策
しが、奸棍が利を嗜 らんがため鑽 もて牙行を
設立 いろいろ おどし
立したれば、各色の横、種々の擾害に遇ふこと枚挙すべからず。
 順治十年[一六五三年]間に至りて、弊國主、世祖章皇
業 さま つぶ
帝に具奏して、牙行の端を害たげることを備さに
申し述 申しお ことごと
陳 べたれば、勅をば福建に行 くりて尽 く前弊
あらため除ぞか
を革  しめ、會同館の事例に照らして館夫を設
あき よりどころ
立するを蒙れり。案冊の炳らかなる拠 あるも、
おも 弊害
意はざりき、事の久しければ、弊の生ずるを。
だしぬけに
  康熈二十三年[一六八四]八月の内、突 として、三
はか あ すで さき
人ありて、謀りて館夫に充てられたり。經に前の
つい   す な存留通事蔡應祥は知覚して、遂に天を投て主と作
さき 文書をしたためて申し立
す等の事を以って前の撫院大老爺金に具控
て 調べて逮捕 実地に調査
したるところ、査緝 して訪 せしを蒙れること
ちかごろ いず ごろつき案に在り。近 、何れの方の土棍なるを知らざる
[他人の牙行の名義] か [牙行の権利保持者] あ
も影 をば藉りて頂 に充てられた
 ごまか な
りと朦混して、大老爺台下に具呈して館夫と作ら
としごと
んこと求むるものあり。切に思ふに、相等、歳 に方物を貢し、貿易するに限りあり。前案には館
夫のことを額に載げありて遵行すること已に久し
面識のなき
きも、今、若し生面 の人を以って、突として驛[柔
いいがかりをつける
遠驛・琉球館]に充入せしむれば、勢い必ず藉端 し
おこ およ かるがる
て事を生し、害に貽ぶこと軽 しくは已まざるに
事情 述べ
あらざれば、情を瀝るものなり。
お願い申します
 大老爺[布政司]に仰叩 するに、相等の海外の使
配 慮
臣が國の爲めに奉公するを垂念せられ、前案を査
参照:冒充
察して、嚴しく禁止を行なひ、額外の冒充[他人の名義を
なら
かたりて牙行の権利を行使すること]を許さざらんことを。併びに、
こいねが
懇 はくは、兩院大老爺に通詳せられんことを。
報告 ごろつき もぐりこむ ふさ
鉄案を立つるを申し、永く奸棍の營に纉 を杜
がば、舊例を不易ならしめ遠人をば安んずるを得るに庶からん。切に呈す。
したた
 康熈三十七年[一六九八]三月 日。呈を具 めたる琉球の耳目官毛天相・正議大夫鄭弘良、三月三日に
たて布政司に上まつる。
(「『呈稟文集』について、糸數兼治」記載の原文をもとに訓讀)