館夫
●「呈稟文集」第十四号文書
 具呈す。琉球國耳目官毛天相・正議大夫鄭弘良
ごろつき やぶ も
等、土棍が騒擾するあれば、害を劈り以って國典
あき も いつ
を彰らかにし以って遠人を柔くしまれんことを天
うっ
にケたへることの爲にす。
せつに思う よしみを通ずる  くだん
  切 に、相等は天朝に納款 して、所有の官
これまでの例
伴水稍が随帶の銀兩をば、歴例 にては、絲布・
さ 事柄
雜物に兌換す。向きの縁故は明の末年のことなり
ごろつき むさぼ 手ずる・術策
しが、奸棍が利を嗜 らんがため鑽 もて牙行を
設立 いろいろ おどし
立したれば、各色の横、種々の擾害に遇ふこと枚挙すべからず。
 順治十年[一六五三年]間に至りて、弊國主、世祖章皇
業 さま つぶ
帝に具奏して、牙行の端を害たげることを備さに
申し述 申しお ことごと
陳 べたれば、勅をば福建に行 くりて尽 く前弊
あらため除ぞか
を革  しめ、會同館の事例に照らして館夫を設
あき よりどころ
立するを蒙れり。案冊の炳らかなる拠 あるも、
おも 弊害
意はざりき、事の久しければ、弊の生ずるを。
だしぬけに
  康熈二十三年[一六八四]八月の内、突 として、三
はか あ すで さき
人ありて、謀りて館夫に充てられたり。經に前の
つい   す な存留通事蔡應祥は知覚して、遂に天を投て主と作
さき 文書をしたためて申し立
す等の事を以って前の撫院大老爺金に具控
て 調べて逮捕 実地に調査
したるところ、査緝 して訪 せしを蒙れること
ちかごろ いず ごろつき案に在り。近 、何れの方の土棍なるを知らざる
[他人の牙行の名義] か [牙行の権利保持者] あ
も影 をば藉りて頂 に充てられた
 ごまか な
りと朦混して、大老爺台下に具呈して館夫と作ら
としごと
んこと求むるものあり。切に思ふに、相等、歳 に方物を貢し、貿易するに限りあり。前案には館
夫のことを額に載げありて遵行すること已に久し
面識のなき
きも、今、若し生面 の人を以って、突として驛[柔
いいがかりをつける
遠驛・琉球館]に充入せしむれば、勢い必ず藉端 し
おこ およ かるがる
て事を生し、害に貽ぶこと軽 しくは已まざるに
事情 述べ
あらざれば、情を瀝るものなり。
お願い申します
 大老爺[布政司]に仰叩 するに、相等の海外の使
配 慮
臣が國の爲めに奉公するを垂念せられ、前案を査
参照:冒充
察して、嚴しく禁止を行なひ、額外の冒充[他人の名義を
なら
かたりて牙行の権利を行使すること]を許さざらんことを。併びに、
こいねが
懇 はくは、兩院大老爺に通詳せられんことを。
報告 ごろつき もぐりこむ ふさ
鉄案を立つるを申し、永く奸棍の營に纉 を杜
がば、舊例を不易ならしめ遠人をば安んずるを得るに庶からん。切に呈す。
したた
 康熈三十七年[一六九八]三月 日。呈を具 めたる琉球の耳目官毛天相・正議大夫鄭弘良、三月三日に
たて布政司に上まつる。
(「『呈稟文集』について、糸數兼治」記載の原文をもとに訓讀)