起馬牌
かんにん キイマアハイ
○官人公用通行のときは自身より起馬牌をさし
ぶ
出す。此の方先き触れのごときものなり。その官
しゅったつ け らい えき
出 立二三日以前、家丁一人を差し立て、通行の駅
ざん はいぶん しょやく站ごとに右牌文を見すれば、駅站の書役、その文
かきうつす ツアウパイ
面を帳面に 抄 す。これを抄 牌という。この牌に応じて人馬の手当致しおくなり。起馬牌式
某官某姓 爲某公務到某處的於某月
某日起程一路所有應用夫馬合先遣牌
知會爲此仰役前去著落該房吏書照依
後開夫馬轎槓名數一一喚備用過領給
工價毋得遅須至牌者
計開
轎 幾乗 馬 幾匹 夫 幾名
右牌仰該房吏書准此
年 月 日〔訓讀記号、読みは省略〕
某官某姓 某公務のために某処に到るもの、某月某日出立す。途中用いるべき馬匹人夫は、先に
ふれぶみ牌 をつかわして知らすべききまり。下僕に命じて先に行き当直の書吏に決着させ、後に書き出だ
か ご
せし人夫馬匹と轎槓の名数によっていちいち準備せしむ。賃銀は後に支給す。遅れて事を誤るなか
ふれぶみ (注一)
れ。以上この牌 を呈上す。
かきたて(注二)
計開 轎何丁 馬何匹 人夫何名
(注三)
右の牌、当直の書吏に此の如くせよと命ず。
年 月 日
注一、須至某某者は公文書の末尾につける慣用句。
二、計開は何が幾つと書き出すの意で、品目数 量を列記する前に書く慣用句。日本の目録 などで用いる「記」に当たる。
三、准此も上より下に用いる公文書の慣用句で、 内容に応じて、これを許す、右了承す、そ の通りにしてよろし、かくの如くせよ、な どの意となる。
(「清俗紀聞2」一四三~一四四頁・『東洋文庫・平凡社』)