牒檄:官府に用るを牒と曰ひ、人心を激發 して之を喩すに禍福を以てするを檄 と曰ふ。乃ち尺書なり。
(「類書簒用」『和刻本類書集成五の三五三』)
   羽檄:檄は尺二の木板を以て書となして、 兵を徴すの書なり。急あれば則ち鶏 毛を挿す。言心は羽飛の疾きが如き なり。(「類書簒用」『和刻本類書集成五の三五三』
○[考察]
@「報答諭告亦並稱檄」(「古今図書集成」六二の一六二一)
A「又、州邦徴吏又稱爲檄」(「古今図書集成」六二の一六二一)
B「奉批、管押進港安挿、査明冊報」(「歴代寶案」二六四四)
C「奉檄、吊進内港、安挿館驛」(歴代寳案」二六四四)
  報答とは「大漢和辭典」には回答する、とある。回答するということは、下級からの報告に対する回答であると解してよいだろう。諭告の諭には、「中日大辭典」によると、「奉諭辧理=命令を受けて処理する」とあって、命令する意味がある。又、「[文體明辯、諭告]按、字書云、諭、暁也、告、命也。以上敕下之詞」(「大漢和辭典」・「古今図書集成」一四四八)とあるように、諭告には、上級者が下級の者に勅(「勅、飭也」「古今図書集成六二の一四四八」、敕は飭に通じ命令する意味である)する、すなわち、命令する意味がある。事例@は下級からの報告に対する回答及び上級が下級に命令する時にも檄を用いると解される。
 批は「中日大辭典」によれば、「上級官庁が下級官庁からの(官庁が民間からの)申請報告に対してなんらかの決定、指示あるいは回答を与えること」とある。この字解は「古今図書集成」の「檄」の解釈(事例@)と同義あるいは類義であると考える。従って、「檄」は上級の申しつけ、命令指示、申しつける、命令する、指示する、あるいは、上級の下級への指示文書、下級からの報告に対する回答文書であると解してよい、と考える。
 批と檄とが類義語であることについて考えた。次に檄と飭、飭令について考察したい。
D「署福防同知文燦移會f安協、檄委f安巡檢、 于初捌日、會驗明白、拾參日、護送進省」
(「歴代寶案」六六七〇)
E「經福防同知文燦移會f安協、飭委f安巡檢、 於貳拾貳日、會驗明白、護送進港、貳拾參日、 駛抵番船浦地方(「歴代寶案」七〇〇四)
F「經兼署福防同知登移會f安協、飭令f安巡 檢、于初伍日、會驗明白、護送進港、初柴日 申刻、駛抵番船浦地方停泊(「歴代寶案」七二一二)
 飭は「中日大辭典」によると、「旧公文書用語。いましめる。命令する。」とあり、飭令は「命令する」とある。先述の通り檄にも「命令する」「申しつける」の意味があったので、檄と飭、飭令とは類義語であると解して良いと考える。従って、檄と批とは類義語であり、檄と飭、飭令とは類義
語であるので、飭、飭令と批もまた類義語ということになる。

 以上のことから、批、檄、飭、飭令は類義語で、申しつけ、申しつける、命令、命令する、あるいは、上級の下級への指示命令文書、下級からの報告に対する回答文書であると解せられる。
○「歴代寶案」の例
@奉檄 、吊進内港安挿館驛(「歴代寶案」二六四四)
A奉檄、行司吊進内港、安挿館驛(「歴代寶案」二一七六)
   (参照:憲行)
◎参照:准咨檄發、節奉檄發、牌檄、批・檄行。