行據
○行據の使用例として「歴代寶案」に次の句がある。
a c
@本司、遵奉憲檄、行據署福州府海防同知王桂詳報(「歴代寳案」)
 右の句の行據の意味を次の句をもとに考える。
A[ a ] b c
随、行査驗、據布政司 呈詳
此の句の主語は福建巡撫である
「行」は「訓讀吏文」の訓みによると「モウシオクル」とあり、「中日大辭典」によると「公文を送る」とある。「査驗」は「検査する、又は検査」の意味である (「中日大辭典])「據」は上級機関が下級機関からの来文を受けとることである。
  例:據・・・呈稱・・・・等情、據此・・・
・・・からの呈文で述べているところに よると・・・とのことである、よって・ ・・・・(「中日大辭典])
 以上の字解にもとづいてAを訓むと次のようになる。
つ 申し送り   しらべ
「随ひで[公文を布政司に]行 て、査驗せしめたところ、
う布政司の詳呈を據けとりたるが」のようになる。
 Aにおける「行」の意味はa がb に公文を送る、であるが、ただの公文ではなく”・・・しなさい”というような何らかの指示が含まれた公文である。
 以上のことをもとにして@の「行據」について考えることにする。
 @の「行據」はAの「行査驗據布政司呈詳」の「査驗]の指示部分が省略された形である。従って、@の「行據」の意味はAの[ a ]行
b 據 c の b の部分を省略した
ものである、と考えてよい。よって「行據」は次の如く訓ずることができる。
申し送り
「[ a が c に公文を]行 て[指示したるところ、その返事として]c の○
受け
○○を據とりたるところ・・・」と
 @の訓讀
福建等處承宣布政使司 受 け
@「本司 [督撫の]憲檄を遵奉とりたれば、[福建等
申し送り
處承宣布政司が、福防同知に公文を]行 りて[指示したるところ、その返事としての]
受け
署福州府海防同知王桂の詳報を據とりたるが、・・・・・・とあり」
「前略・・[福建等處承宣布政使司]康熈參拾參年貳月七日、奉総督福浙部院加五級朱 批、前司呈詳、査得、琉球國王遣官毛文善等、領官伴水稍、坐駕海船壱隻、來f接貢、業經報明、奉憲臺批、速飭盤驗、
 ◎ × × × × × × × ×照例造冊詳報、等因、遵即、行令福州府會同城營、
 × × × × × × × × × × × × × ◎照例盤驗、造冊詳報去後、今據福州府知府石之致
申稱・・・」(「歴代寳案」p三八〇)
 この例は文書のやり取りの経過が明瞭であり、又職務執行に伴う指示命令の発行者が誰であるか、そして、それを受けた者が誰であるかも明らかにされ、且つ、その指示命令の内容も記されていて、「行據」の意味を了解する上で参考になるものである。この例文によって「行據」が先に提示したように解釈できることがより鮮明になると考える。
 此の例文で×××部分すなわち「福州府に対する指示命令の文」を省略すると先にあげた「行據」
の用語ができる。
 「歴代寳案」ではこのような重要部分が省略されているのにとしばしば出会う。文脈に沿うように言葉を補って解することが必要であると考える。
何が省略されているかを掴むことが解釈のポイントである。
○[参照:飭據]
@「随即、飭據前署福州府海防同知那∵。訊得」  (「清代中琉關係档案選編」)
ただち 申しつ
@「随即に、飭 けたるに、前署福州府海防同知那
とりしらべたるところ う
≠フ訊譯得 を據けとりたるものによれば云云 」
※ 飭據と同様な句法に行據、詳奉、奉行等が ある。