空道
○[空道]
一、接貢船より持ち帰り候空道サびに執照御印御判数の書き付け取り添え、長史長嶺通事親雲上持ち登り、日張主取伊是名親雲上取り次ぎ差し出し候に付き、見届け、評定處に於いて焼き収め申すべき旨、口上にて御書院当与那覇親雲上取り次ぎ上聞に達し相い済み候に付き、御印御判切り取り焼き収めさせ、毘紙は久米へ差し返させ候事。但、御印御判数の書き付け、心得られ当まで相い渡し候。(「琉球王国評定所文書・第一巻」四六三「接貢船帰帆日記」の「読み下し」)
○空道のこと
 支那に遣はさるゝ琉球の使節には空道といふて、白紙に国王の印鑑を捺されたものを何か非常時の臨機の処置の用意として渡されたもので、御用が済むとその儘持ち帰り返上したのである。清朝の革命のとき使臣は明朝への上奏文を書き換へて直ちに捧呈した爲に感賞に預ったことなどの例もある位で、当時琉球の支那に対する外交政策は欺瞞を以て終始してゐた。例寄八集巻十によると「申
[文]
年唐 江持渡候空道咨皮一通無之云云」といふ案文があって、当時の使臣が空道を支那より持ち帰り報
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告すべき筈のところを咨皮一通失却したために平
等所(裁判所)で糾問せられ責任者は科料に処せられたことが見えている。又同書に支那皇帝よりの書簡を持参したる者が鼠害に逢ふて文面を汚損したゝめに「寺入」の処分にされたことなどがある。(「真境名安興全集、第三巻」六十六頁「笑古漫筆」)