○冊同抄白符文執照、分別存送  (「歴代寳案」七八五二)
○附件分別存送の考察
  附件分別存還
上級が下級機関に向かひて発出する指令、       批示の類の文書中に、下級よりの來文中の
あるもの
幾種の附件について、有的は保存して備案
あるもの もと 返  還
し、有的は原の単位[もとのの下級機関]に発還する ことを表示する用語である。(「歴史文書用語辭典」原中文)
存:「公文書を保管する] (「中日大辭典」)
右の用語を援用して、「冊同抄白符文執照、分別存送」の訓みを考察すると次のようになる。
「冊同抄白符文執照」は下級機関[福建等處承宣布政使司]が上級機関[総督・巡撫]に提出した付属文書である。
両者を対比して見ると、次のようになる。
 附件、      分別存還
冊同抄白符文執照、分別存送
両者の句型は全く同一である。従って、「冊同抄白符文執照、分別存送」は「附件 分別存還」の意味を援用して解釈できると考える。
 以上のことから、「冊同抄白符文執照、分別存送」を次の如く解することができよう。
うつしとり
 「冊と抄白たる符分執照とは、分別して[あるものは備
保管案として]存し、[あるものは禮部に]送るべし」と(参照:[送部」)
○冊の内容
  冊照存   (「歴代寳案」一六〇四)
抄照冊存送 (「歴代寳案」一六〇四)
冊抄白執照存 (「歴代寳案」五七七〇)
冊抄照存送 (「歴代寶案」五五二五)
冊存送執照存 (「歴代寶案」五六〇〇)
冊符文執照存送 (「歴代寶案」五六九八)
冊抄白文照存送 (「歴代寶案」五六三八)
冊の具体的内容については進貢の時と接貢の時とでは若干違うが、進貢のときには、進貢の方物、官伴が交易のために随帶して持ち込んだ琉球の産物と中国の物品を購入するために持参した資金、及び進京する官伴、存留する官伴、進貢船に乗って歸國する官伴の人数と名前等について記した進貢事務に関しての書類であり、接貢時には、官伴水稍の人数・名前、防船軍器、官伴が交易のために随帶して持ち込んだ琉球の産物や食物及び歸國する官伴、存留する官伴、前に進貢のために上京し回りて滞f中の貢使で歸國のために接貢船に附塔する官伴の人数と名前等について記した接貢事務に関する書類等を指す。総督・巡撫の「批示」中に見られる「冊」の具体的内容については、
「福建等處承宣布政使司の本司詳」中に現れることが多い。(参照:抄照)
○「歴代寳案」の例
@仍候督部堂批示、ク、冊存送、至所送数冊、僅敷送部、並即備造壹本呈送、備案、毋違、奉此
(「歴代寳案」四六四六)
な ま 第一の詳文とこの批文を提出
@「仍ほ督部堂の批示を候たれよ。ク
保管
せられたし。冊は[一部は]存し[一部は関係機關に]送るべし。
なほ よう  禮部  部 足至、送る所の数冊は、僅やく部に送るに敷りるの
またただち 作  成
みなり。並即 に壹本を備造して、呈送せられた
たが なか 以上のおもむき承知仕まつれり
し。違ふ毋れ。」奉此 。
◎参照:結冊、紅冊、皇冊、黄冊、四柱冊、清冊、奏銷冊、陳設冊冊誥文
制度
○冊文・誥文の合称。清の制では王・貝勒・貝子・公將軍等の世爵を冊封し、親王は金質の冊・寶を給わり、郡王は銀質飾金の冊・印を給わり、貝勒・貝子は紙冊を給わり、公以下は誥命を給わる
それぞれ
なり。各  の冊及び誥命の上の字は即ち冊文・誥
よ 處 理文と為す。冊誥の文は翰林院 に由って辧理し、初
顕  彰 お
次の受封及び軍功をば昭著されし者は文内に于い
記  載 作  成
て載入して撰擬して具奏し、皇帝が欽定す。世職
た とお
及び襲封ならば則ち只だ題定の文式の按りに、世
しさい およ  さだめさしだ
次の縁由及び襲封の年月を添写し、字様を擬出
清 書 べつ 作成
し、中書科に咨送して繕写せしめ、ネに文字を撰せざるなり。公主・福晋・夫人・郡主・縣主等を
ま あ冊封するにも亦た冊文・誥文有り。冊誥の文は均しく満・漢の体を兼備するなり。(史志宏)
(「中国歴史大辭典・清史(上)一二二頁、原中文)