寺廟

○役人たちが民衆の不幸に対するかれらの同情心をもっと強く示したがる機会は、旱魃によるか、大雨によるか、それともいくつかの省に満ち溢れる無数の蝗といったようななにか他の事故によるかして、収穫が乏しいのではないかという恐れがある時である。その時には役人は愛情から出たものであろうと、利害関係から出たものであろうと、あるいは上辺だけのものであろうと、人気取りの行動に出ることを忘れない。大部分のひとたちは読書人であって、仏教や道教を嫌っても、威儀を正して全寺廟を巡歴しないではおかない。それもこれらの偶像に雨や好天を求めるために、かれらの慣習に反して徒歩で行なうのである。

(「イエズス会士中国書簡集4・社会編」九〇頁備考四、『東洋文庫・平凡社』)