除・・・外
○某事を附帯して説明するときの常用述語。主要な用法に二あり。
@凡、文書中にて述べる所の事に関係のあるその
処 理 状 況
他の問題が有って、其の他の辧理すべき情形を附
一  緒 し
帯して説明して、文を受けとる者をして一并に知
ら 必 要
道しむることの需要あらば、則ち、此の語を套用すべし。・・・中略・・・
后面に接する所の語句は、受文者に向かひて[文の発信者が]提出するの具体意見なり。       (「歴史文書用語辭典])
  右の「歴史文書用語辭典」の字解から「除・・・外・・・」の構成と意味は次のように考えてよいだろう。
   甲     除・・・ 乙 ・・ 外・・ 丙 ・・
「甲 には、正文、乙には正文に附帯して受信者に知らすべき事項が記され、丙には、文書の発信者が受信者に対してなした指示・命令・意見等が記される」と
○「歴代寶案」の例一
@・・又、爲抄片行知事、道光參拾年拾壹月初伍

日、奉巡撫部院徐 憲牌『爲照、本部院、於道光

參拾年拾月貮拾玖日、會同督撫堂、恭摺具奏、琉

球國送到朝鮮國遭風難夷任尚日等、安頓撫恤、譯

訊供情、委員護送進京、遣發回國壹件、除挨奉到

\批、ネ行恭録飭知外、合先抄片行知、備牌到司
丙即便、轉行査照、毋遅』・・・
 『・・・・・』は巡撫部院の憲牌の範囲である。
この憲牌の文書の授受関係がどうなっているかというと、「憲牌」の発信者は巡撫であり、受信者は福建等處承宣布政使司である。
 この前提と先に見た「除・・・外・・・」の構成法とから、

「挨奉到\批、ネ行恭録飭知」は文書の発信者である巡撫が、これから自身で処理すべき事項について、正文である 甲 に付帯して文書の
受信者である福建等處承宣布政使司に 甲
と一緒に知らせたものであり、「合先抄片行知、

備到司、牌即便、轉行査照、毋遅」は、福建等處承宣布政使司に向ひて提出する巡撫の具体意見すなわち指示命令である。
      申しお
@又、抄片もて行 くりて知らす事の爲にす。
  うけ
道光參拾年拾壹月初伍日に[福建等處承宣布政使司が]奉とりた
ここにてらしみ
る巡撫部院徐の憲牌によれば、[巡撫部院の徐が]爲照
るに 巡 撫 部 院
 本部院は道光參拾年拾月貮拾玖日に督部堂と會同して、琉球國より送到せられたる朝鮮國の遭風難夷の任尚日等をば、安頓撫恤して、譯して供情を訊ねて、委員をして護送進京せしめて遣發して回國せしむべきことの一件を恭摺したれば、\
受け玉わりとど ま べつ 申しおく批を奉   到くを挨ちて、[此の文書とは]ネに行 り、恭
        記録   しく[天子の\批を]録して飭知する
のぞ ほか 申しおく
ことを除くの外、合しく先に抄片もて行 りて知ら
ととのへたる 福建等處承宣布政使司 ただち
すものなり。備    牌が司 に到らば、即便
とりいで申しおく 承  知
に[福建等處承宣布政使司は琉球國中山王世子に]轉 行 りて査照せしめられたし。遅くなること毋れ。 (「歴代寶案」七八四五〜七八四六)
○「歴代寶案」の例二
[除・・・、至・・・・外、合併・・]
A又爲抄片行査事、咸豊貮年拾壹月初拾日、奉前総督部堂李 憲箚、照得、本部堂、於咸豊貮年拾壹月初柴日、會同福建撫部院王、附片具奏、琉球國王世子、遣使齎到咨文、f省内地民人蔡祥慶等、在洋漂収琉球地方安頓、被klm國夷船、前徃拿回陸拾餘人、尚有貮百餘人寄寓該國、現經分別査辧、各縁由一片除
挨奉到\批、ネ録飭知、并抄録片稿原咨名冊、飛咨欽差大臣、兩廣督部堂、照會在粤夷酋、轉飭厦門領事、迅速交審及行興泉永道、即速、督同厦防同知、照會k國在厦領事巴n士、遵照條約、迅將前在琉球國拿回之f省内地民人、按名交出、聽候該道、廰等秉公審辧、並將抄片内所指各節明晰、據實聲覆核辧、一面、轉飭泉州府及同安・晋江・南安・恵安・安渓等縣、一體、確査該民人等、平日在家、實在、是良是匪、査傳各該族房保隣各壹人、訊取切實供結、呈送通詳、該道職、司夷務、必須督飭認眞査辧、毋得稍任泄延遷就、大于未便、曁、行汀j龍道轉飭j州府龍渓縣、確査該民人等、平日在家實在、是良是匪、査傳該族房保隣各壹人、訊取切實供結呈送通詳核辨、至琉球國咨送原冊、開造蘓章壹名、係汀州府龍江縣人等語、査、f省汀州府、並無龍江縣、究竟該府所属各縣内、有無蘓章其人、並即分飭査覆、並行福梟司、一體飛速移行、分別遵照辧理、該司並移f省総局司道、督同夷務各委員、移飭査照、外合并抄片行知、備牌到司、即速一體移行、遵辧、該司仍挨此案査訊明確、随時、咨覆琉球國王世子、査照、毋違、速速・・・   ([歴代寶案」八〇四六〜八〇四七)
申しおく しらべ
A又抄片もて行 りて査 たる事の爲にす
咸豊貮年拾壹月初壹日、
受けとり @
[福建等處承宣布政使司が]奉たる前総督部堂季の憲箚によれば
A照らし得たるに、
前総督部同李
本部堂が、咸豊貮年拾壹月初柴日に於いて福建撫
B部院の王と會同したりて、
琉球國王世子が使を遣わして齎らし到らしめたる
C咨文に
おき
「f省内地民人蔡祥慶等は洋に在りて漂ひたるを
すく
琉球地方にて収はれ安頓しぬるをklmの夷船に
すすみいた なほ
前徃 られて陸拾餘人を拿回せられたり。尚貮百餘
琉 球 かりずま  すで
人の該國に寄寓 ひする者あること現に經に分別して査辧したり。」
C  おのおの 以上の趣
とある各 の縁由の一片を
B附片具奏したること
A
あれば、
受け玉わりとどく べつ
\批を奉到 を挨ちて、[此の文書とは]ネに[天子の\批を]
記録 通 知
録して飭知すべきこと
原稿
並びに[上奏したるところの]片の稿・[琉球から送られてきた咨文であるところ
記録 速やかに
の]原咨の各冊を録して、飛 欽差大臣、兩廣督部
咨文もて通知 廣東
堂に咨  し、[兩廣督部堂をして]粤に在るの夷酋に照會
すみやか
せしめ、[在粤の夷酋長をして]厦門領事に轉飭して飛速に
こもごもしらべ
交審 せしめたること
また 申しおく すみやか
及、[兩廣督部堂をして]興泉永道に行 りて、即速に厦防
監督引率
同知を督同してk國の在厦領事たる巴n士に照會し、[巴n士をして]條約に遵照して迅速に前に琉球國に
もっ
在りて[k國船に]拿回せられたるf省の内地民人を將
しら           公平
て名を按べて[興泉永道に]交出せしめて、該道聽が秉公
に審辧し並びに[f浙督部堂の季と巡撫の王の両院が送る所の]抄片内の
もっ 明  瞭 返  答
指す所の各節を將て明晰に實に據りて聲覆するを聽候して核辨せしめ
一 方
一面、[興泉永道に]泉州府 及び 同安・晋江・南安・恵安・安渓等に轉飭し、一體に該の民人等が平日家
まこと  これ よきひと わるもの
に在るのとき實に在るや、是れ良  なるや、匪
それぞれ それぞれ しらべしょう
なるやを確査し、各  該の族房の各  壹人を査傳
かん 確 実 供述と確証
して、切實なる供 結を訊取して呈送通詳せしむるとともに、興泉永道 すべ かんとくめいれい
該道の職は夷務を司り、必ず須からく督  飭し
し しらべあきらか すこし ゆった  て眞を認りて査   辧にすべきにつき、稍も泄 り
のびのび ル ーズ 不都合
するに任せ延 になりて、遷就にして未便を大きく

することを得る毋からしめ
また 申しおくりて
曁、[兩廣督部堂をして]汀j龍道に行 、j州府・龍渓縣に轉飭して、該の民人等が平日家に在るのとき
まこと
實に在るや、是れ良なるや、是れ匪なるやを確査
それぞれ それぞれ しらべしょうかん
し、各  該の族房の各  壹人を査傳 して、切實

供述と確証
なる供 結を訊取して呈送通詳せしむるとともに核辨せしめたるを除き、
なおまた かきしる
至、琉球國より咨もて送りし原冊に蘓章と開造
されたる壹員は、汀州府龍江縣の人に係れりとの
以上の赴     しら等語について[兩院にて]査べたるに、f省汀州府には
た  汀 州 府
並へて龍江縣無ければ、該の府をして属する各縣
きはめつく とに蘓章、その人有るや無きやを究竟 さしむると並
もに すみやか
即 に、分飭して査覆せしめると
と 按 察 司 申しおく すみや
並もに[両院は]福梟司に移行りて、一體に飛 かに
処 理
分別し遵照して辧理せしめたれば、
福建等處承宣布政使司 また 申し送り   監督
該司 も並f省総局司道に移 夷務委員を督
引率 承 知 につきて
同して移飭して査照せしむべきこと外
申し送りて知ら  したためたる合并して抄片もて行 知 するものなり。備
福建等處承宣布政使司   すみやかに牌が司  に到らば、即速 一體に移行して
むねにしたがひて処理 福建等處承宣布政使司 な
遵   辧すべし。該司 は仍ほ此の案の査訊
ま した
して明確になるを挨ちて、時に随がい、琉球國王
咨文もて返事 承 知 なか
世子に咨覆  して、査照せしむべし。違ふ毋れ。
いそがれよ
速速・・・ 、
@
とあり        (「歴代寶案」八〇四六〜八〇四七)


考察
 右の事例二の「甲・・除・・・乙・・・、至・・丙・・・外、合并・・丁・・・」(例二)は「甲・・・除・・・乙・・・外・・・丙・・・・」(例一)の慣用句の変形句だと考える。
@「挨奉到\批〜通詳核辨」と「至琉球國咨送
原冊〜移飭査照」の内容が極めて大きく相違して
る。
 A(例一)で訓むと、合并の意味が判らない。すなわち、何と何を合并(一緒にして)して「抄片もて行知」しているかが分明できない。
 B「至・・・合併聲明」の慣用句があって、それは「再・・・合併聲明」の用法と同じである。その慣用句に類似した「至・・・合并」の句が事例二で使用されている。
 B右の事例二を例二のように訓むと、合并の意味が理解できる。すなわち、「挨奉到\批〜通詳核辨」の部分と「至琉球國咨送原冊〜移飭査照」の部分とを合併して、抄片もて行知したこたが分明できる。
 以上の@からCまでのことによって、事例二は例二の構文で訓むことができると考える。
尚、外に「・・・につきて」との訓読は「訓讀吏文」によった。