抄照
  抄 :写す。写し、複本(「中日大辭典」)
照 :執照の省略形
○[考察]
[照が執照の省略であることの考察]
@沿海商漁船、以十船編爲一甲、各給予執照、商
船於照内註明船主名、及船工水手、出洋時由ケ口官驗施。漁船則書船甲字號於大小篷及船旁。照
内註明船主、其舵工水手、ケ口官随時査註放行。 (「大清會典」巻十七)
@「沿海の商漁船は、十船を以て編して一甲と爲し各々執照を給予す。商船は照内に於いて船主の
はっきりと注記 おき いづ
姓名及び船工水手を註明 す。洋に出るの時は、ケ口官に由りて驗施す。漁船は則ち船甲字號を大小の篷及船旁に書す。照内には、船主・其の舵
注  記
工水手を註明す。ケ口官は随時註せしを査して放行す。
A「冊照存」(「歴代寶案」一六〇四)
B「抄照冊存送」(「歴代寶案」一六〇四)
C「冊抄白執照存」(歴代寶案」五五二四)
D「冊抄白執照存送」(「歴代寶案」五七七〇)
E「冊抄照存送」(「歴代寶案」五五二五)
F「冊存送執照存」(「歴代寶案」五六〇〇)
 右の「清會典」の「商船於照内註明船主姓名及船工水手」にある「照」は、その直上の「執照」の執の字が省略されたものであり、執照は略して「照」と称すこともあることが知れる。
  [冊についての考察]
G「[福建等處承宣布政使司]爲禀報事、康熈肆拾肆年肆月貮拾貮日、奉総督福浙部院仍管福州将軍事務加二級金批、該本司呈詳、査得・・・・・中略・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
銀?
并將進貢方物、官伴随帶土産錫兩、分別進京・存留・摘回參項官伴員名人數、轉造清冊呈送、伏候憲臺察照具題、聽候部議可也等縁由、奉批、仰候撫都院會題、ク、冊照存、奉此、又、奉巡撫都察院□批、本司詳、同前由、奉批、仰候會題、仍候督部院批示、ク、抄照冊存送、奉此・・・・」
(「歴代寶案」一六〇四)
 事例Gでの「冊」とは、進貢方物、官伴が交易のため随帶して持ち込んだところの琉球の産物と中国の産物を購入するために持参した資金と、進京する官伴、存留する官伴、接貢船に乗って歸國する官伴の人数等について記した進貢事務に関する書類のことである。又、冊には「・・・所有官伴水稍員名、防船軍器、随帶土産食物、逐一造冊、分別摘回・存留・附塔京回貢使官伴名數、備造清冊呈送(「歴代寶案」一五五二)」とあるように、接貢事務に関する書類もある。
  [AからFの句点の打ち方の考察]
 右のことから、Aの「冊照存」の「冊照」というのは、進貢あるいは接貢に関する事項について記した文書である「冊」と「執照」であるといえよう。
 Aの「冊照」が「冊」と「執照」であること、またCの「冊抄白執照存」、Dの「冊抄白執照存送」、Eの「冊抄照存送」の「冊」にはいずれも抄の冠詞がなく、それから、総督、巡撫に到った「冊」は福防廳から「備造細冊呈報」(「歴代寶案」一六〇三)されてきたものをもとに、福建等處承宣布政使司が「轉造清冊」して督撫に呈送したものであることから、「冊」は写しではなく「オリジナル」な文書であると考えられるので、Bの「抄照冊存送」は「抄照・冊、存送」と句点できることが知れる。抄白とは「中日大辭典」によると、「写し、ひかえ」とある。
 以上のことから、CDEも次のように句点できる。
 C「冊・抄白執照、存」
 D「冊・抄白執照、存送」
E「冊・抄照   存送」
 CDEが右のように句点できることによって、「存」という用語と「存送」の用語の存在が導き出されることが知れる。従って、Fの「冊存送執照存」は次のように句点できる。
 F「冊存送、執照存」
[符文省略の表記法についての考察]
 H「冊符文執照存送」(「歴代寶案」五六九八)
I「冊抄白文照存送」(「歴代寶案」五六三八)
執照の執を省略して「照」で執照を表わす用語の省略法に従って「符文」を省略して表現すると「文」になること、及び、「歴代寶案」にHIの例があることによって、Iの「冊抄白文照存送」の「文」は符文の「符」を省略したものであり、「符文」であると考える。