档案
○明清時代の衙門の公文書・記録・各種档冊を明清档案と総称する。これは中国に現存する非常に貴重な典籍の一つである。中国第一歴史档案館に收蔵している明清档案は凡そ一千万件以上もある。
(「歴代寶案研究」第2号」所載「明清档案と中琉関係史料の構成について」)
○明清両代の文書档案は形式分類すると、主に摺本式、巻軸式、冊葉式と簿冊式の四種類に分けられる。
 摺本式とは、公文書・文書副本・底本等であり、数量は最も多くこれは原史料である。
 巻軸式(例えば誥命・勅命・輿圖等)や冊葉式(例えば冊文・詩文・書画等)は数量は最も少ないが、これも原史料である。
 簿冊式(即ち档冊)は数量的には摺本に次ぎ第二位を占め、その中には紀録類档冊(例えば文書登記簿・公務活動紀録・日記帳等)と彙抄類档冊の二種類がある。彙抄類档冊は編年体彙抄、専題彙抄に分けられ、これは均しく副本に属するがその文字や形式は原本と異なる箇所がある。しかし、史料的価値からみると、やはり官府衙門制度により作成された档案史料であることがわかる。
(「歴代寶案研究・第2号」「明清档案と中琉関係史料の構成について」)
○明清文書档案の形式分類
摺本式(公文書・文書副本・底本等)
 档案 巻軸式(誥命・勅命・輿圖等)
冊葉式(冊文・詩文・書画等)
簿冊式(档冊)

  紀録類档冊(文書登記簿・公務
   活動紀録・日記帳等)
彙抄類档冊  編年体彙抄
 専題彙抄
○档案について述べると、吾が国の公文書に対比する語としては古来「公牘」なる呼称があった。ところが、明末に至り、档案なるものが生まれてきた。これに対して档案は公牘の保存文書を指す語であるとの見解もあるが、単にそれだけではなく、明末にこの語が使われ出したのには歴史的意味がある。神田信夫氏の説明を借りると、档案とは「中国、主として明清以後の官府の文書。清初
満州人は紙の代わりに木牌に文字を記し、これを保存するのに皮ひもで貫いて壁にかけておいたが、その形が档に似ているので档子といわれ、さらに档案ともいわれるようになった。初めはおもに満州文字で書かれていたが、その後、漢字で紙に書くようになってもこの名称が用いられ、現在では広く官府の文書の意味に使われている」(平凡社刊「アジア歴史事典七」)とある如く、満州文字の公用化の中で生まれてきた語であり、必然「档案が作成された時期も明末ということになる。・・我が国の公文書(館)の英訳語としてARCHIVES
を用いているが、これは公的文書のみでなく、かなり広い範囲の文書をも指すのに対し档案は我が公文書館が対象としている公文書と性格が近似している。すなわち官府の文書のみを指す語である。(「中国の旅ー中国第一歴史档案館成立六十周年大会に参加して」ー長澤孝三『北の丸 ー国立公文書館報ー第十八号、昭和六一年五月、国立公文書館』)
○档案という言葉は明末清初になってはじめて使われたといわれ、档案の档は木の書架、文書を収める棚の意味で、案はひとまとまりの文件(文書)を指し、清代に一般に適用するようになった。
(「清代中国・琉球関係档案史料展目録」4頁、沖縄県公文書館。1995年、8月)
◎参照:宮中档案、内閣档案、内務府档案、明代 文書档案、明清档案